北島酒造は、「きもとづくり」に取り組んでいます。きもとづくりは、現存する酒づくりの技法のなかでもっとも伝統的な技。理想の食中酒を追求したらきもとづくりにたどりつきました。
理想はクラシックな味わい。だから技法もクラシック。
日本酒は、酒母(しゅぼ)が味の決め手のひとつです。 酒母は、酵母を培養して大量に増殖させたもので「もと」ともいわれ、文字通り「酒のもと」になります。
そのつくりかたは、いくつかありますが、「きもと」は空気中の硝酸還元菌や乳酸菌を利用し、雑菌の繁殖を抑えて酵母を育てる方法で、酒づくりの原点といえます。「もと擦り」とよばれる作業が重労働なうえ、完成まで30日以上かかるため、既製品の乳酸菌を添加し1~2週間でつくることのできる「速醸もと」が開発された明治時代以降は廃れていきました。
しかし、私たちは、その酒の味わいに惚れ込み、あえて伝統的な手法を取り入れました。
その温度管理は、酒母を低温に保ちながら3℃上げて2℃下げる、数日かけて5℃上がったものを4℃下げる、といった具合です。一気に温度を上げて発酵をすすめたり、腐敗をどうにか誤魔化そうとしたきもとは、雑味でゴツゴツした味になります。逆に、誤魔化しのないきもとは、奥に引き込まれるようにスッと体に馴染みます。
北島酒造では、あせらずゆっくり誤魔化しのないきもとづくりをしています。そして、そのノウハウをすべての酒造りに活かしています。
きもとづくりの酒には表現力があります。たとえばコンパスではなくフリーハンドで描いたほうが、味のある円が描けるように。
長い発酵期間のあいだ、あらゆる菌との争いに勝ち抜いた酵母は、コクがありながらキレのある酸がきいた完全発酵の酒を醸します。そうした酒は熟成に耐え、燗で力を発揮します。
それが、北島が考える「きもと The Sake クラシック」です。
きもとづくりの酒に限ったことではありませんが、当蔵はほとんどの酒を「泡あり酵母」で仕込んでいます。 かつてはどの蔵も泡あり酵母でしたが、たくさん仕込めて掃除がラクという理由で、今はほとんどの蔵が泡なし酵母を使用しているといってよいでしょう。
人によっては、泡ありも泡なしもできたお酒の味は同じと言います。 でも、わかる人にはわかる。水泡、玉泡、筋泡、岩泡・・・、その泡を見てこそ酵母と「会話」ができるのです。
そして、その味わいは酸がくっきりしており、コクとバランスが取りやすく、きもとづくりと相性が抜群です。軽快な現代風の泡なし酵母には出せない味わいです。
もっともっと酒に奥行きと幅を。だから、泡あり酵母を使用しています。