〜 6 月便り 〜


  さわやかな気候もつかの間、天気予報では雨マークがポツポツと増えてきました。それでも時々、リュックを背に、レインコートを着て歩いている人々の姿を目にします。 

 北島は東海道沿いに店を構えており、日本橋から京都まで? 東海道制覇を目指して歩いていらっしゃる方がよく立ち寄って下さいます。お一人で頑張っていらっしゃる方から、歩こう会ツアーの団体さままで様々ですが、雨の日は本当に大変そう。荷物を降ろして、水琴屈にあふれる仕込水でのどを潤して、ほっとひと休みして頂けたら、と思います。この辺りは細いわりに車の往来がとても激しい所。歩かれる方はどうぞくれぐれもお気を付けて下さい。どうか楽しい旅となりますように。そして、その思い出のひとコマに、北島を加えて頂けるととても嬉しく思います。

  鼻歌というのは一般に、気分の良い時に出るものというイメージがありますが、私の場合は、落ち込んでいる時に出ることが多いような気がします。そして大概、そういう時ふと口ずさんでいるのはなぜかいつも同じ曲。「星に願いを」(When You Wish Upon a Star)という曲です。ディズニー映画「ピノキオ」の主題歌としても有名な曲ですが、ジャズ好きな私にはジャズボーカルのスタンダード・ナンバーとして、とっても大好きな曲の一つです。誰でも耳にしたことのある柔らかく美しい旋律もさることながら、大好きなのはその歌詞。「星に願いをかける時、君が誰かなんていうことは関係ない。君が望むことは何でも、きっと叶う。」 ― 仕事に焦りを感じた時、生活に疲れを感じた時、自分の無力さにどうしようもなく悲しくなった時、自分が誰にも必要とされていないと淋しくなった時、そんな時に思い出すのがこの歌。鼻歌は、無意識に自分で自分を元気づけようとしているのでしょうか。6月の長い雨の夜、この歌を聞きながらゆっくりとお酒を飲む、そんな時間も必要でしょう。お祝いごとなどのおめでたいお酒も、仲間と語らう楽しいお酒ももちろん大歓迎。だけど人には、想い出にひたったり、未来に不安を感じたり、色々な時があるでしょう。

北島は、一人一人のお客様の、一瞬一瞬の大切な時間、嬉しい時も悲しい時もお供をさせて頂ける、気持ちに寄り添うお酒でありたいと、私は思います。あくまでも個人的な思い入れで、もしかすると十三代目や十四代目、そして蔵人さんや従業員さんらの目指しているお酒としての方向は違うかもしれません。それでも私は、日本酒に限らず、「お酒」というものに向き合うようになってからずっと持ち続けているこの考えを、決して変えたくはないと思っています。

6月10日(土) Tomo 記



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