〜 1月便り 〜


   この地では毎年1月14日、獅子舞が見られます。私の実家の北陸は、とても盛大に獅子祭りをする所だったので、“獅子が来るよ。”と初めて聞いた時にはてっきりお祭りでもあるのかと思っていましたが、それは大きな勘違い。こちらで見られるのは三重県の伊勢神宮から来られる神様の使いの獅子。賑やかで勇壮な獅子囃子とはまた違い、とても厳かで神聖なものなのです。朝七時半、あいにくの小雨の中、「伊勢大神楽講社」の皆さんはやって来られました。各蔵を回ってご祈祷をして下さったあと、お店の前で舞を舞って下さいます。この獅子頭に頭を噛んでもらう(噛むふりをしてもらう)と縁起が良いということで、皆噛んでもらうのですが、“賢くなあれー”と1歳半の下の子を近付けようとすると、“こあいこあい(怖い怖い)。いやいや。”と、泣いてしまいました。(その日の晩も寝言で“怖い怖い”と。よほど怖かったのでしょう。)遠くお伊勢さんから来られた方々は、“怖くないよー”と優しい目で子供の頭を噛んで下さり、次の舞を舞うため隣の家へと移られました。北島を出発点に、これからずっとこの辺りを1軒ずつ踊って廻られます。この雨の中、本当に有難うございました。

   さて、焼酎の大ブームも去り、日本酒のおいしさが見直されつつあるように思う今日この頃。赤ワインが流行れば赤ワイン、ウイスキーでもシングルモルトが流行ればよりマニアックなモルトへと、人は流行に流されていきます。私たちは種々様々、色々なお酒や食べ物を口にすることができる、とても恵まれた環境で生活しています。実際私も、“これはいける”とか、“うーんイマイチ”とか、はたまた“飽きてきた”とか、好き勝手言って批評をしては飲み比べや食べ比べをしています。食べ物に限らず、服でも、香りでも、自分の好みに合うものを探す時間というのは、本当に楽しいものです。でもそれが一番の幸せでしょうか?

   当蔵の隣近所のお客様は北島の「金紋」を飲まれています。「金紋」とは昔の級別廃止前の2級酒のこと。一升瓶で1,682円と、当蔵で最も安いお酒です。そのご近所さんに、どんなに美味しい大吟醸やしぼりたての新酒を勧めても、「やっぱり金紋の燗が一番うまい!」と即座に答えが返ってきます。あれこれと美味しいものを探し求めて浮気している自分と、一つのものを飲み続けておられるご近所さんと、どちらが幸せかというと、さてどちらでしょう?「自分が戻れる場所」(「自分が自分に戻れるお酒」)というものが見付かっている人の方が、きっと、たぶん、幸せなのでは。
一番底辺の「金紋」が美味しい。これがうちの基本姿勢です。地元の人に愛され、支持され、飲み続けて頂ける ― それが地酒。今年も来年もその先も、ずっとそんな蔵であり続けたいと私は思います。

1月14日(土) Tomo 記



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