〜 8月便り 〜


 夏です。旅行のご予定の方も多いのではないでしょうか。小さな子供がいる今はなかなか行くことができませんが、私は旅行が大好きでした。国内の温泉地から海外まで、場所は様々ですが、一人でふらっと出掛ける貧乏旅行が好きでした。そんな私が、これまで訪れた中で最も好きな土地の一つがベルギーでした。歩いているだけで気持ちの良い街、街の中の時間の流れが自分のリズムと合っている、そんな感じでした。

 ある晩、ベルギー人の友人一家が首都ブリュッセルを案内して下さいました。そこで入った、有名なグランパレスの真向かいのパブでのこと。そのお店のメニューは10ページほどもあったかと思われるのですが、載っているのはなんとすべてビール。他のドリンク類は申し訳程度に、数種のミネラルウォーターと一緒に最後の1ページにちんまりと載っていました。今でこそ「ベルギービール」として日本でも知名度を得ていますが、当時の私にはどれが何だかさっぱり分からない。勧められはしたものの、正直なところビールが苦手な私は(ビールメーカーの方、ごめんなさい。)ちょっとためらってしまったのです。すると友人のお父様が“ベルギーのビールはだーいじょうぶ!”(と言ったように私には見えた。)とにっこり笑って、家族皆であれにしよう、これにしようと選び出しました。そして私の目の前に運ばれてきたのは、美しい絵のラベルが付いた小さな黒い小瓶と、それと同じ絵が描かれたちょっと武骨なワイングラスのようなグラス。注いだビールは赤ワインのように綺麗な色で、味はカクテルのようにフルーティー。ビールってこんなに美味しいものかと目からウロコでした。この時、それぞれのビールに各々対のグラスがあることや、色々なフレーバーがあること、そしてとても歴史の古い飲み物であることなどを教えてもらいました。皆が頼んだビールも味見させて下さったのですが、どれもまたそれぞれに味わいが違い、とても美味しいものでした。

 翻ってはたして日本はどうでしょうか。私たちはベルギーの友人一家のように、誇りを持って国酒の味わいや歴史などをきちんと説明する事ができるでしょうか。現状は、和食レストランや有名な料亭でも日本酒はごく数種類用意されているだけ。そして、ソムリエはいても、日本酒を上手に提供できる人がいるかというと、そうではないことが多いように思います。
 どうして、いつから、日本酒はこのような立場に甘んずるようになったのでしょうか。日本に住む人が皆胸を張って“これが日本のお酒です!”と海外の方に紹介できるような日が来ることを心から願い、私たちは今日も明日も頑張り続けます。

8月13日(土) Tomo 記



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