〜 4月便り 〜


 最近家で掃除機をかけていても、“カラカラッ”という音がしなくなってきました。「何のこと?」と言われてしまいそうですね。これは米粒の音、酒米の粒を掃除機で吸ってしまった時の音です。秋冬の酒の造りに入っている間は、作業服のそこかしこに仕込みで使っているお米がくっついてくるらしく、そうやって知らず知らず、ごく数粒ですが蔵のお米が家の中まで入ってきて、掃除機をかけると“カラカラッ”というのです。9ヶ月になった二女は、ただ今ハイハイ真っ盛り。大人が気付きもしないような小さな物を床の上に見付けては、何でも口に入れてしまう頃です。きっとこの米粒も食べてしまったに違いない・・・。こうやって酒蔵の子は、赤ちゃんの時からお酒になじんでいくのかな、などと考えたり ― 。とにもかくにも今年の造りも無事終わり、蔵人さんたちは今月13日桜舞い散る中、郷里の但馬へと帰られました。

 学生時代とその後の社会人生活を京都で過ごした私にとって、京都は最も好きな土地の一つです。先日その京都で、大学の先輩方や恩師の先生と久しぶりに再会いたしました。この季節ですもの、「お花見」です。鴨川沿いの桜はすでに葉桜となりかけていましたが、とてもお天気の良い日で、川からの風が心地良く、桜の花びらのじゅうたんの上、思い思いのお酒や食べ物を広げ、とても楽しい時間を過ごしました。

 そこでふと思い出したのが唎き酒師の試験。数年前に唎酒師呼称資格認定試験を受験した際に、「春夏秋冬、それぞれに最適の飲酒のシチュエーションを設定せよ」といったような論文形式の問題があり、“春は満開の桜の下、真っ白な薄手の磁器の酒器で、さらっと軽いタイプの生貯蔵酒を―”などと書いたような書いていないような・・・。でも結局はそんなことより何より、楽しく和やかに語らえたら、それが一番ですね。


―この日一番の酔っぱらい? いえいえ、子供は木陰でスースーお昼寝でした。―

 この資格を取ったのは、まさか自分が蔵元へ嫁ぐとは思ってもみなかった頃なのですが、今現実に役に立っているかというと、「?」な部分も多い。日本酒をお客様に紹介する唎き酒師の立場と、実際に酒を造る側、売る側の立場とで、何か微妙なズレを感じるのです。しかしそれが何かというと、上手く説明が出来ない。

 これは、日頃お世話になっている自称「日本酒を知りすぎた男」のS氏にも以前ご指摘頂きましたが、“造る側の人間が自分の酒について語る言葉が乏しい”ということとも関係していると思います。どのお酒の説明も似たり寄ったりで、単なる無味乾燥な商品説明。蔵元や専門家などの説明よりも、単にお酒が好き、という友人や先輩方の意見の方が的を得ていると感じることが多いのです。このズレを追究し、その溝を埋めていくようもっともっと努力することが、日本酒の良さを知って頂く一番の近道になると私は信じています。このホームページが少しでもその役割を果たしていけたら、と願うのですが・・・。ご意見・ご感想等お持ちの方、どうぞお知らせ下さい。お待ちいたしております。

2005年4月18日(月) Tomo 記
 



(C)KITAJIMASHUZO