〜 1月便り 〜


 新年 明けましておめでとうございます。皆様、どんなお正月を過ごされましたでしょうか。北島酒造も年末年始の間はお休みをさせて頂きました。しかしお正月と言えど、蔵人さんは休みなしでお酒と真剣勝負の毎日です。そんな忙しい蔵人さんですが、元旦の朝には私たちの所までお正月のご挨拶に来られます。例年はとても厳粛に感じた朝のその数分が、今年はヨチヨチと歩き回る我が娘に、皆の表情も柔らかくなってしまっていた気がいたしました。

そして今日は早や7日。我が家でも七草粥を作ろうと思いスーパーへ七草を買いに行ったのですが、高かったので買うのをやめ、適当なお野菜で間に合わせて作ろうかと考えていました。すると、普段あまり口出ししない主人(十四代目)に、「日本の食文化の担い手であるべき者がそんな事ではあかん」と、たしなめられてしまいました。ごもっともです、ごめんなさい。どうにかこうにか七草粥を作り、取り合えず満足はしてもらえたようです。

話変わって、新年早々非常に申し上げにくい事が起きてしまいました。「純米にごり うま酒」 - 当蔵で唯一のにごり酒で、その独特の風味と健康志向とでとても人気のあるお酒です。「何だか少し嫌な匂いがする」と、数名のお客様よりご連絡を頂きました。調べてみると、昨年11月に蔵出ししたこのお酒の一部が品質劣化していることが判明しました。(身体に害はありません。)今年は例年以上の暖冬のため、このお酒を貯蔵している蔵内の温度管理が非常に難しかったこと、さらに、小売店さまなどを経てお客様のお手元へ届くまでの流通過程上でも気温が影響してしまったことなどが考えられます。この「うま酒」は、当蔵でも最もデリケートなお酒で、お取り扱い頂くお店はもちろん、お客様にも冷蔵保存をお願いしてはおりますが、こういう結果に到ってしまい、一同非常に猛省いたし、今後の対策を検討すると共に、ご連絡下さったお客様に誠心誠意対応させて頂いているところです。

このようなことは私が北島へ来てから初めてのことで、「お酒は生き物」とはよく言いますが、人、水、空気など、すべてが相互に影響しあっていることを、痛感する出来事でした。他にもお気付きの点があるお方がもしいらっしゃいましたら、大変お手数ですが、当蔵まで着払いでその商品をお送り下さい。原因究明をいたし、今後二度とそのような事の無いよう、より美味しいお酒を造り続けていけるよう、努力をいたします。何卒本年も御代栄をご愛飲賜りますよう、心よりお願い申し上げます。


TOMO
2004年1月7日(水)


〜 2月便り 〜



 この度、私たち北島酒造は新しい商品を発売することとなりました。そのお酒の名前は「直」(ちょく)。“ふな口から滴り落ちる生原酒を直(ちょく)に詰め、直(ちょく)にお届けし、直(ちょく)に召し上がっていただきたい”、そんな思いからこの名前が付けられました。お届けしたその日に召し上がっていただければ、まだシュワシュワとかすかに発泡している感覚もお楽しみいただけます。お酒がまだ発酵している(生きている)証拠。普段は、蔵までわざわざ足を運んでいただいた方にしか味わっていただけなかった特別なお酒です。その日に詰めて、その日の内にお届けするため、こちらの勝手ではありますが日を限定させていただいている、まさに完全予約制の限定酒なのです。(本年は2月27日予約締め切り、3月6日お届けの一日のみとなります。)

 正直な話、こういった企画は決して珍しいものではありません。しかしそれでも、構想○年、商品化されるまでに膨大な時間と人の手が掛けられました。ラベルの文字は、家族ぐるみでお世話になっているKさんにお願いして書いていただきました。北島酒造はじまって以来とも言えるポスターや案内文もすべて私たちの手作り、手作業。お酒の仕込み、すなわち米から酒を醸すまでの大変さはもちろんですが、それを「商品」として世に送り出す大変さというものを、今回初めて私は体験いたしました。十三代目当主が以前に、娘を着飾らせて嫁に出すような気分、と言っていたのも頷ける気がいたします。この「直」は十四代目が中心となって、嫁入りの日に向け、現在も進められています。
 
 蔵見学へ来られた方がこのしぼりたての酒を口に含んだ瞬間の笑顔。
それこそが、永く酒造りに携わってきた者にとって最高の一瞬とのこと。蔵まで足を運んでいただかなくとも、少しでも多くの方にこの美味しさを直(ちょく)に味わっていただくことが出来ないか・・・その熱い思いが、今ようやく実を結ぼうとしています。どうかどうか、この「直」が、皆様の笑顔の種となりますよう、そしてこれがきっかけとなり、皆様と素敵なご縁を結ぶことができますよう、心から願ってやみません。


TOMO
2004年2月9日(月)


〜 3月便り 〜



 まだ固くつぼんでいた店内の桃の花が、一つ、また一つとほころんできました。明日は桃の節句、お雛祭りです。北島酒造のお店では、3種のお雛様がお客様をお出迎えしています。1つは店の奥の座敷の間に見える木目込み人形のお雛様。これは実家の両親が娘の初節句に贈ってくれたものです。もう1つは衣装着の立ち雛スタイルのもの。そしてもう1つは、お酒のディスプレイの横にちょこんと置かれている信楽焼きのミニ雛。これは義母のお友達の手作りとのこと。どれもそれぞれに味わいがあり、ほっと心も桃色に染められるような気がします。お雛様というのは、何がというわけではないけれど、やはり女性にとっては何か特別な存在なのです。

 先日、某新聞社の週間情報誌の方が店内にある水琴窟(すいきんくつ)の取材に来られました。「滋賀県内で耳に出来る音風景」というテーマで、偶然ここが編集室の方の目に(耳に?)とまったようです。ただ残念ながらその音は、通常お客様が来られる日中は、耳をそばだててみてもかすかにしか聞き取ることが出来ないほどの小さな音。私たちの耳がもう慣れきってしまっているごく日常のざわざわした音ですら、この音を聞くには障害になるのです。しかし旅先などで他の水琴窟を聞いてみると、スピーカーの設置等の関係もあるのでしょうが、それはもっとはっきりと、金属音にも近く聞こえます。“うちのはもっとやわらかい音やけどな…。”心を静めるはずのその音が、どうにも耳について落ち着きません。この取材にあたり、水琴窟を造って下さったS造園さんから聞いたお話しで、初めてその理由が分かりました。十三代目がこの水琴窟を造る際に大きくこだわった一つがこの音。“大吟醸酒を搾る時の音に似せたい”ということだったそうです。これで納得。あくまでも自然なこの音には、そんな思いが秘められていたのでしょう。朝晩には、自然に滴り落ちる雫が優しく奏でる“ぽろん”という音が響き渡ります。これを皆様にも聞いて頂けたら、と思うのですが・・・。せめてこの音を聞くためにお水を流された時、そのザーッという音に続く“ぽろろろん”で満足しないで、もう少し後の雫の余韻までゆったりと待ってみて下さい。S造園さんが語られた「現代人に失われつつある、自然を五感で感じる余裕と力」を思い出すきっかけとなれば、と思います。


TOMO
2004年3月2日(火)


〜 4月便り 〜



 家の裏の桜並木がもう満開となってきました。ここまで来ると早いものです。約半年もの間、故郷を離れ、寝食を忘れてお酒の仕込みに打ち込んでこられた蔵人さんが、今月の半ばには郷里の兵庫県但馬へ帰っていかれます。本年の仕込みも無事終え、現在はしぼったお酒の火入れや蔵の掃除、片付けに追われる日々とか。この掃除が完全に終わり次第、帰郷のその日が決まります。昨年は、ちょうど家のそばの桜がちょっと遅めの見頃を迎えた頃でした。今年もその日はもうすぐです。

 お酒の仕込みは終わったとは言え、本当のお仕事はまだまだ続きます。お酒は生き物。出来上がったお酒たちは、今も蔵の中で呼吸をしています。その個々の原酒の風味を活かすため、どのように熟成させ味わいをのせていくか、またどのように貯蔵していくか、ひと段落着く間もなく、次は「熟成・管理」という仕事が始まります。専門的なことは人前であまり口にしない14代目も、時々ぽろっと洩らします。"酒は仕込みが終わって終わりじゃない。これから熟成を経て完成品にするまでが大切なんだ。"と。蔵人さんが心血注いで造られたお酒を良くするも悪くするも、これからの熟成と管理にかかってくるのです。しかもそれは私たちが手を加えるというのではなく、あくまでもお酒自体が生きていく環境を酒質ごとに整えてやるだけ。フランスのチーズには、生産者とは別に熟成士(ギルドフロマージュ)というものがいるそうです。お料理とチーズの相性のことはよく言われますが、種類や産地で合わせるだけでなく、熟成度で合わせる食べ方もおもしろいとか。日本酒でもぜひ色々試してみてください。

 先日、貯蔵蔵(ちょぞうぐら)の改装工事が完了いたしました。氷温冷蔵施設の増設工事だったのですが、それぞれのお酒に最適な温度での管理・貯蔵が今まで以上に可能になったそうで、これで、1月便りに書かせて頂いたような異常気象による品質変化などを防ぐことが出来ると考えています。また、より多くの瓶貯蔵による長期熟成が可能となり、この貯蔵法で一層含み香の多い上品な旨味を引き出すことが出来ると聞きます。蔵人さんが帰られても、ここで日本酒の「熟成士」が日々お酒を見守っていきます。美味しいお酒を皆様の元へお届けするために。            

 

2004年4月2日(金) Tomo 記


〜 5月便り 〜


 今年もいつものツバメがやって来ました。いつの頃からか蔵の窓に巣を作り、この季節になると決まってどこからかやって来るのです。毎年のこととは言え、蔵の外壁を汚されてしまったり・・・と、「あら、かわいいわ。」で済むことばかりではないのですが、それでもやはり、かわいいヒナがピイピイと精一杯大きな口を開けてえさを求めたり、少し大きくなり、ふらふらしながらも飛ぶ練習を始める様を見たりすると、今年も無事来てくれて良かったな、と思ったりするのです。酒蔵に住む(?)このかわいいツバメの赤ちゃんが、巣立ちの日を迎えるのももうすぐでしょうか。

  さて先日、以前からずっと行きたかった滋賀県立近代美術館へようやく行ってくることができました。お目当ては「志村ふくみの紬織り」展。恥ずかしながら、志村さんが滋賀県ゆかりの方と知ったのはつい数年前、滋賀へ嫁いできてからのこと。それまで私にとって志村さんは“国語の教科書の中の人”。確か中学校の国語の教科書に掲載されていた大岡信さんの随筆の中で、志村さんが桜の色を染め上げる時のエピソードが載っていたのですが、それがとても印象的だったのです。

  色と言えば、お酒のラベルの色もまさに色々。これが本当に難しい。なかなかこちらが頭に思い描いている色を印刷屋さんに上手に伝えることが出来ません。仮に運良く色見本などで気に入った色が見付かっても、紙質が変わったり、ラベルとしてその色の上に字をのせてみたりすると、それだけで色の印象は変わってきてしまうのです。印刷業者さんには言いにくいのですが、注文したはずの色とは微妙に違う色で仕上がってきたこともありました。色はそれほどに数多くのごく微妙な要素がからみ合い、言葉に表現することも出来ないくらいかすかだけれど、それでいて確実に私たちの五感にはっきりと何かを訴える強い力を持っているのでしょう。志村さんの作品は、その豊かな色彩はもちろん、それぞれに付けられた作品名もとても美しく、非常に興味深いものでした。

いつの日か、この日見たような繊細で美しい“いろ”を持つお酒を世に出したいと考えています。さてどんな“いろ”になるか、どうぞご期待下さい。

 

2004年5月12日(水) Tomo 記


〜 6月便り 〜

 様々な花が目を楽しませてくれる季節になりました。お庭では毎日、昨日とはまた違うのが花を咲かせています。この季節店内に飾っているのは、ほとんどが家の庭や裏の山沿いに咲いたもの。お花屋さんで買い求めてきた豪華なのも良いですが、こういう野の花のようなのもまたほっとして良いものです。

 さて、5月も末に近付いてくると、私たち多かれ少なかれ日本酒に携わる者は、心なしかそわそわとしてきます。そうです。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、全国新酒鑑評会の結果発表があるのです。そしてこの平成16年度全国新酒鑑評会において、北島酒造はめでたく金賞を受賞をすることができました。従業員一同、ご愛飲いただいているお客様をはじめ、多くの方々のお力添えがあってこそのものと、心より感謝してやみません。

 まして杜氏や蔵人の喜びはひとしおであったと聞きます。発表の数日後に、当主と数名の従業員とで蔵人の住む兵庫県の但馬までお祝いの挨拶に行ったのですが、その時の歓迎ぶりは大変なものであったようです。

 本年度は全部で1049点の出品酒があり、そのうち278点が金賞を受賞したそうです。時々言われることではありますが、鑑評会で金賞を取ることだけが酒蔵の目的ではありません。もちろん、蔵の全精力を傾けて金賞受賞に挑む蔵元もありますが、逆に、お客様が普段口にされる日常酒にこそ力を注ぎ、鑑評会には一切出品しないという蔵元もあります。どの世界にも通じることでしょうが、私が北島へ嫁ぐまで携わっていた洋酒に関係する世界でもやはり同じことがあり、各種大会に出場して技術を磨く先輩から、大会には一切参加せず、お客様や日常の業務を第一とする先輩まで、様々でした。ただ一つ言えるのは、どの先輩も自分の仕事に絶対の信念と誇りを持っていたということ。日本酒も同じ。何事もそれぞれの蔵元の考え、姿勢です。しかしやはりいずれの考えにしろ、やるからには精一杯の力を尽くし、上を目指すこと。お酒を口にする時、このお酒を造った蔵元はどういう所なのかな、といったことをちょっと思いながら飲むのも、また楽しみの一つかもしれません。

 

2004年6月14日(木) Tomo 記


〜 9月便り 〜
 

 オリンピックで盛り上がった今年の夏。皆さんはどのような夏をお過ごしでしたか?先日、古くからお付き合いのある、とある酒屋さんからちょっとおもしろいファックスが届きました。―水泳の北島康介選手の活躍がこのお酒にも影響しているようで、オリンピック応援と同時に突然完売です!− 北島酒造にはその名も『北島』(そのまんまですが・・・)というお酒があり、そのお酒の注文ファックスだったのですが、まったく考えもしていなかった反響に思わず笑ってしまいました。日本のどこかに、『北島』を片手にオリンピック放送を見ながら、北島選手をはじめ日本の選手を応援している人がいると思うと、何だかとても嬉しいのです。このお酒は2年前の冬、品質を重視し無駄な装飾を省く、と質実剛健を目指して造られたお酒で、決して北島選手の便乗商品ではないのですが、たまたま同じ名字ということで選手と重ねて見て頂けたのでしょう。なにはともあれ多くの選手の大活躍に、手に汗握る夏でした。

 出産のため、7月、8月とお休みを頂いていましたが、早いもので9月です。この季節便りを始めてから1年が経ちました。非常に個人的なことではありますが、数年前の9月、あるお店で飲んだジャックローズというカクテルが、私のお酒への道の始まりでありました。(「飲む」という意味ではなく、「勉強する」という意味で、です。)9月は一年のうちで一番お酒の似合う季節だと、私は思います。まだ暑さが続きながらも少〜し肌寒くなってくる9月、そして何とはなしに少〜し人恋しくなってくる9月、そう、まさに今、この頃です。お酒をちょっとだけ飲んだ後の外へ出た時の空気の気持ち良いこと!空はどこまでも透き通って、どこまでも漆黒で、自分が夜に包まれているような気がします。ウイスキーでもワインでも、ビールでも焼酎でも、一番好きな物なら何でも良いと思います。けれどやはり日本酒。秋には秋の秋酒を・・。この季節には「ひやおろし」というこの時期だけのおいしい日本酒があります。冬に仕込まれ、ピチピチと若くフレッシュだったお酒が、一年の熟成を経てしっとりとまろやかになったものです。北島酒造でも、毎年この時期には地元の百貨店等で「ひやおろし」の量り売りをいたします。皆さんも是非是非一度、お試しください。

 

2004年9月7日(火) Tomo 記


〜 10月便り 〜

 ようやく空気が秋色に染まってきた今日この頃、カレンダーはもう10月です。
毎年10月の始めの頃、大津プリンスホテルで、地元酒問屋のエスサーフさんが主催する大きな利き酒会があります。入場料500円で選りすぐりの日本酒と焼酎が思う存分試飲できるこの利き酒会、お客様にとっては酒の肴まで付いているというお楽しみ付きです。各蔵元はお酒の他にもおつまみを持参することになっており、そのおつまみは試飲用のお酒に混じって所狭しと並べられます。

 北島酒造でも、一昨年前まではお漬物などのおつまみを用意していたのですが、昨年初めて、飴玉サイズの小さな小さなおにぎりを用意してみました。日本酒はお米でできているお酒ですから、ご飯が合うのも当然ではあるのですが、「酒の肴」というイメージでは無いので、最初社内で提案した時には「おにぎり?」と怪訝な顔をされました。しかし、北島のお酒は何よりご飯が合う、とずっと思っていた私は、せっかく試飲して頂くならお酒とあての相乗効果でよりおいしく召し上がって頂きたい、と一つ一つ心を込めて作っていきました。

 昨年は、お酒の仕込み水(とてももったいない話なのですが、北島家ではお料理に使う水はもちろん、お風呂のお湯までこの仕込み水と同じ水なのです。)で地元産の新米を炊き、ご近所さんから頂いた手作りのしそを混ぜたものなど、3種類を用意しました。今年は、妹の所から分けてもらったコシヒカリに、滋賀県名産の日野菜と無添加の鰹を混ぜ込んだおにぎり。見た目は悪いかもしれませんが、安心して食べられます。召し上がられた方、いかがでしたでしょうか?

 ここ数年、食の安全というものが問われて久しいですが、生産者の顔が見えないというのがその大きな原因とも言われています。製造業である私たち蔵元も、直接お客様と接する機会は残念ながらあまりありません。このような試飲会など、一つ一つを大切に、出来る限り多くのお客様とのご縁を育んでいけることを、心から願っています。

さて、今月下旬には蔵人さんも蔵入りされます。また忙しい季節がやってきます。気を引き締めねば。寒くなる季節、どうぞ皆さんもお身体大切に。

 

2004年10月8日(金) Tomo 記


〜 11月便り 〜


 異常気象と言われ始めたのはいつ頃だったでしょうか。その「異常」が当たり前となってしまった今では、一体何が異常かも分からなくなってしまいました。しかし今年は本当に恐ろしい。観測史上最多上陸の台風に、新潟県中越地震。気象と地震は全く関係は無い、と専門家の方がテレビでおっしゃっていましたが、こうも立て続けに自然災害が起きると天変地異を思わずにはいられません。度重なる台風では日本各地が大きな打撃を受け、今でもニュースや新聞でその被災状況を見るたび心が痛みます。また、地震の起きた新潟は日本有数の酒処で、蔵元仲間もたくさんおり、その計り知れない被害の大きさはもとより、皆の安否が気遣われ、連絡が取れるまで不安な日々が続きました。

 幸い滋賀県は大きな被害もなく無事に済んだのですが、蔵人さんの住んでいる兵庫県北部は台風の被害がひどく、その後処理のため当初予定されていた杜氏さんの蔵入りも延期されました。10月28日、ようやく無事蔵入りされましたが、その日、「お土産に」と杜氏さんが下さった奥様お手製の栃餅。まだ台風の爪跡が残っているであろうその土地で、寒い秋冬の半年の間、一人で留守を守らねばならない状況で、奥様はどんな気持ちでこの栃餅を作り、杜氏さんに持たせて下さったのでしょう。とても美味しいお餅だったのですが、杜氏さんの覚悟と、そして杜氏さんを送り出して下さった奥様の覚悟が、そのかすかにほろ苦い栃の風味と重なってひしひしと伝わってくるようでした。聞けば新潟県の中でも最も震災のひどい地域は、越後杜氏の郷(さと)でもあるとか。月並みな言い方ではありますが、一日も早い復旧を心から願うばかりです。

 最近店内で、今まで酒とは無縁だったような若い女性を度々見かけるようになりました。二ヶ月ほど前、ご縁あって滋賀県出身のある男性歌手のファンクラブ・オリジナル限定酒を造ったのですが、それがきっかけとなり、足を運んで下さるファンの方が増えたようです。こうやって少しでも日本酒に、そして蔵に興味を持って頂けるのは本当に嬉しいことです。ファンの方は、楽しくて非常に礼儀正しい方が多く、ご丁寧なお手紙まで頂戴することも度々。こちらこそ来て下さって有難いのに恐縮です。これが日本酒の良さを知って頂くきっかけとなれば嬉しい限りです。T・Nさんの歌を聴きながら、おしゃれに日本酒の杯を傾けて・・・。

 

2004年11月1日(月) Tomo 記


〜 12月便り 〜



 昨日はとても風の強い日でした。北島酒造から裏へ少し歩いた所に小さなお宮さんがあるのですが、その紅葉のじゅうたんのまあ見事なこと!お掃除する側から考えるとウンザリしてしまいそうですが、新雪の上を歩く時のようなサクサクとした音が心地良く、次から次へと紅葉散る中、娘はとても嬉しそうにその上を跳ね回っていました。葉の色が本当に鮮やかだった昨年に比べ、今年は少しくすんでいるように見えます。秋らしい秋、冬らしい冬が来ていないことを紅葉の木も感じているのでしょうか。

  お歳暮シーズン真っ只中のこの季節、大活躍(?)するのが包装紙です。簡易包装が主流の昨今とはいえ、やはり大切なお贈り物ということで、お酒を包装させて頂く事が非常に増えます。店頭でお話させて頂くことはあまりないのですが、北島酒造のこの包装紙、ちょっと自慢なのです。これには昔々の酒造りの様子が描かれており、絵の中の桶には、さりげなく「御代栄」の文字も。中にはこの絵が気に入って、“包装紙をお土産に下さい”とおっしゃる方もいらっしゃいます。店内には原画を額に入れたものが飾ってありますので、お店へ立ち寄られた方、どうぞ一度ご覧になってみて下さい。

  先日、物置蔵の整理をしていると、思いがけず古い写真が沢山出てきました。おそらく先代、先々代あたりのものでしょうか。まるでモノクロ映画の中のような、今では「レトロ」などとと言っているその世界が現実であったということが、なんだかとても不思議な感じがいたします。なんて昔の人は綺麗なんでしょう、本当にため息が出るほど。結婚式や七五三などのハレの場の写真、普段の何気ない暮らしの写真、そして大きな樽の前で撮られた蔵人さんの写真、セピア色の風景の中に、この地の、そして北島の長い歴史を感じることができます。

  気持ちが悪いほどポカポカとした日が続き、思わず師走ということを忘れてしまいそうですが、今年もまもなく終わり。
北島酒造は来年、創業200周年を迎えます。

 

2004年12月6日(月) Tomo 記



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