〜 11月便り 〜

 異常気象と言われ始めたのはいつ頃だったでしょうか。その「異常」が当たり前となってしまった今では、一体何が異常かも分からなくなってしまいました。しかし今年は本当に恐ろしい。観測史上最多上陸の台風に、新潟県中越地震。気象と地震は全く関係は無い、と専門家の方がテレビでおっしゃっていましたが、こうも立て続けに自然災害が起きると天変地異を思わずにはいられません。度重なる台風では日本各地が大きな打撃を受け、今でもニュースや新聞でその被災状況を見るたび心が痛みます。また、地震の起きた新潟は日本有数の酒処で、蔵元仲間もたくさんおり、その計り知れない被害の大きさはもとより、皆の安否が気遣われ、連絡が取れるまで不安な日々が続きました。

 幸い滋賀県は大きな被害もなく無事に済んだのですが、蔵人さんの住んでいる兵庫県北部は台風の被害がひどく、その後処理のため当初予定されていた杜氏さんの蔵入りも延期されました。10月28日、ようやく無事蔵入りされましたが、その日、「お土産に」と杜氏さんが下さった奥様お手製の栃餅。まだ台風の爪跡が残っているであろうその土地で、寒い秋冬の半年の間、一人で留守を守らねばならない状況で、奥様はどんな気持ちでこの栃餅を作り、杜氏さんに持たせて下さったのでしょう。とても美味しいお餅だったのですが、杜氏さんの覚悟と、そして杜氏さんを送り出して下さった奥様の覚悟が、そのかすかにほろ苦い栃の風味と重なってひしひしと伝わってくるようでした。聞けば新潟県の中でも最も震災のひどい地域は、越後杜氏の郷(さと)でもあるとか。月並みな言い方ではありますが、一日も早い復旧を心から願うばかりです。

 最近店内で、今まで酒とは無縁だったような若い女性を度々見かけるようになりました。二ヶ月ほど前、ご縁あって滋賀県出身のある男性歌手のファンクラブ・オリジナル限定酒を造ったのですが、それがきっかけとなり、足を運んで下さるファンの方が増えたようです。こうやって少しでも日本酒に、そして蔵に興味を持って頂けるのは本当に嬉しいことです。ファンの方は、楽しくて非常に礼儀正しい方が多く、ご丁寧なお手紙まで頂戴することも度々。こちらこそ来て下さって有難いのに恐縮です。これが日本酒の良さを知って頂くきっかけとなれば嬉しい限りです。T・Nさんの歌を聴きながら、おしゃれに日本酒の杯を傾けて・・・。

2004年11月1日(月) Tomo 記
 



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