〜 4月便り 〜


 家の裏の桜並木がもう満開となってきました。ここまで来ると早いものです。約半年もの間、故郷を離れ、寝食を忘れてお酒の仕込みに打ち込んでこられた蔵人さんが、今月の半ばには郷里の兵庫県但馬へ帰っていかれます。本年の仕込みも無事終え、現在はしぼったお酒の火入れや蔵の掃除、片付けに追われる日々とか。この掃除が完全に終わり次第、帰郷のその日が決まります。昨年は、ちょうど家のそばの桜がちょっと遅めの見頃を迎えた頃でした。今年もその日はもうすぐです。

 お酒の仕込みは終わったとは言え、本当のお仕事はまだまだ続きます。お酒は生き物。出来上がったお酒たちは、今も蔵の中で呼吸をしています。その個々の原酒の風味を活かすため、どのように熟成させ味わいをのせていくか、またどのように貯蔵していくか、ひと段落着く間もなく、次は「熟成・管理」という仕事が始まります。専門的なことは人前であまり口にしない14代目も、時々ぽろっと洩らします。"酒は仕込みが終わって終わりじゃない。これから熟成を経て完成品にするまでが大切なんだ。"と。蔵人さんが心血注いで造られたお酒を良くするも悪くするも、これからの熟成と管理にかかってくるのです。しかもそれは私たちが手を加えるというのではなく、あくまでもお酒自体が生きていく環境を酒質ごとに整えてやるだけ。フランスのチーズには、生産者とは別に熟成士(ギルドフロマージュ)というものがいるそうです。お料理とチーズの相性のことはよく言われますが、種類や産地で合わせるだけでなく、熟成度で合わせる食べ方もおもしろいとか。日本酒でもぜひ色々試してみてください。

 先日、貯蔵蔵(ちょぞうぐら)の改装工事が完了いたしました。氷温冷蔵施設の増設工事だったのですが、それぞれのお酒に最適な温度での管理・貯蔵が今まで以上に可能になったそうで、これで、1月便りに書かせて頂いたような異常気象による品質変化などを防ぐことが出来ると考えています。また、より多くの瓶貯蔵による長期熟成が可能となり、この貯蔵法で一層含み香の多い上品な旨味を引き出すことが出来ると聞きます。蔵人さんが帰られても、ここで日本酒の「熟成士」が日々お酒を見守っていきます。美味しいお酒を皆様の元へお届けするために。            

 

2004年4月2日(金) Tomo 記
 



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